迎賓館だった聴松閣がある「南園」
揚輝荘には北園ともうひとつ、南園があります。北園は池泉式遊式庭園ですが、南園は回遊式の枯山水石庭と趣が違います。南園は敷地面積が北園の半分以下ですが、クラシカルな雰囲気の中でお茶を楽しめる聴松閣もあり、憩いの場として多くの人が訪れています。
南園のメインは「聴松閣」
北園と南園は離れたところにありますが、連絡通路があるので行き来することができますよ。枯山水石庭の南園には地上3階、地下1階で山小屋風の外観が特徴の「聴松閣」があります。聴松閣が建てられたのは1937年。迎賓館としての役割を持つ聴松閣は、地上3階部分は各国の様式がミックスされた仕様ですが地下はインド様式と何とも斬新な造りになっています。この年代には珍しい車寄せもあり、そこには祐民が中国で購入したといわれているトラの石像が置かれています。その他、石積みの柱のあるポーチや小口切りにされた木の年輪を模様にした玄関など、祐民が55歳で社長業を引退した後に訪れたインドやアジアの仏跡巡拝の影響を随所で感じることができます。
建物は入場料は中学生以下は無料、高校生以上が300円で一般公開されているので気軽に見学できますよ。
祐民のこだわりが垣間見える
1階には展示室と喫茶店があり、展示室には揚輝荘のジオラマが飾られています。全盛期の時のジオラマなのであまりにも広大な規模に圧倒されてしまうかもしれませんね。
喫茶店は1階の奥にありますが、その名前が「喫茶べんがら」。聴松閣の外観はパッと目を引くベンガラ色の土壁なのでそれを参考にしたのかもしれませんね。喫茶店ではコーヒーや手作りのクッキーが楽しめます。
聴松閣は各国の様式がミックスされた造りになっているので1部屋1部屋イメージが全然違います。2階には書斎やサンルームがありますが、こちらの部屋はイギリスの山荘風となっています。部屋の一角には一等船室をイメージした丸い窓とソファもあります。また、寝室もありますがこちらは書斎とは趣が大きく異なり中国風になっています。天井には鳳凰が描かれ、装飾も中国の王宮をイメージするものばかりです。
各国の様式をミックスした造りになっているだけあって柱や床の模様は全部違っているし、建具などもひとつずつこだわっているのがわかります。
地下には大きなホールも。アジアンテイストを採り入れた造りで、カンボジアのアンコールトムにあるレリーフが再現されていたり、インドのアグラ城と同じように輝石をはめ込んだ模様が描かれたりしています。地下は地上よりも光が届きにくいためどうしても暗くなってしまいますが、窓の外を掘り下げて光が差し込む設計になっているので地下とは感じさせないほど明るい造りになっています。